いざさらば書を捨てよ / Droog

最近一週間ごとに書を捨てたり拾いに戻ったりしています。
極端はよくないですね。習慣習慣。
タイトルはたまたまYoutubeで見つけた音楽から。

最近のバンドとは思えないこのダルいパンクさ。
オフィシャルHPを観たら1991〜92年生まれの高校生だそうでびっくり。
http://tosp.co.jp/i.asp?i=BEPPU&P=0
ギターとかけっこう上手いのにこういうダサい音楽をやってしまうのがいい。写真を見てやっぱりRAMONESか、と納得しましたが笑
最近メジャーデビューしてにわかに有名になってきたTHE BAWDIESなんかとも、ジャンルは違えど芯が近いですね。

彼らも前面に50〜60年代Old Rockの香りをぷんぷんさせてます。


古典を再解釈してますよー、とあからさまにアピールすることが差異化になる時代、というのは面白いと思います。
すごい乱暴に言ってしまうと、それまでの音楽業界は一般的に、世界中から発掘してきたマイナーだけどいい音楽/違うジャンルだけどいい音楽のイイトコドリをして自国で新しい音楽を作っていたのですが、もはやメジャーとマイナーの境界が消えてしまった現代では、むしろメジャーな音楽の影響を前面に出すことでそのファンをそっくりそのまま自分達のファンとして獲得しようという流れが生じている、と考えられるのではないでしょうか。あまりに新奇な音楽だと中高年層から支持を得るのが難しくなってしまいますが、古典の再解釈であれば一番パイの大きい消費者層であるアラサー〜アラフォー世代もターゲットに成り得るんですよね。昨今の再結成ブームやリマスターCDの盛況を観ても分かるとおり、懐かしさは中高年層の消費を刺激する重要な要素です。韓流やごくせんやだんご三兄弟の流行、クレヨンしんちゃんの劇場版『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』のヒット、コンビニ用に再販されるワンコインの懐かしマンガ、パチンコ台の古いモチーフ使用の増加など、そうした一連の懐かしさを感じさせるものがトレンドの大部分を占める状況はここしばらく続いています。少子高齢化や収入減少による消費活動の保守化(安くて確実なものを購買するようになる)など、様々な理由がみつかりますが、こっちは本題ではないので詳しい分析は省きましょう。

もう一つ読み取れる今回の本題は、ジャン・ボードリヤールが予測した「シミュラークル」が支配する文化産業の未来に近づいているなあという印象です。「シミュラークル」というのはオリジナルとコピーの区別が弱くなったときに出てくる中間形態を指すのですが、彼らの音楽はまさにシュミラークル的です。完全なコピーではありませんし、オリジナルというには元ネタがあからさまに透けて見えます。むしろ透けているからこそ価値が発生していると言えるでしょう。そこにギャグとしての性質はほとんどなく、純粋に「好きでコピーしてたら似た音楽作っちゃいました」という彼らの声が聞こえてきそうな楽しさと喜びに溢れているのも大きな特徴です。これは、これまでにギャグ・パロディ・オマージュとして存在していた曲やバンド、そしてもちろん単なるコピーバンドとは明らかに質が違います。例えばOasisビートルズへのオマージュを公言していますが、彼らは基本的に彼らの時代の音で再解釈しています。また、王様という洋楽直訳ロックミュージシャンは、演奏はそっくりコピーしていますが、洋楽を直訳すると意外とかっこ悪い歌詞だという滑稽さを売りにしています。強いてシミュラークル的なバンドを挙げるとすると、The BeatlesのパロディバンドとしてスタートしたThe Rutlesがその走りとして挙げられるでしょうか。彼らはもともとはパロディの名の通り風刺性があり、滑稽さを売りにしていたのですが、声やオリジナル(?)楽曲のクオリティがあまりにも高かったために大評判になりました。一応当初の目的として風刺性があったので、ここで言っている意味でのシュミラークル的音楽とは言えないかもしれませんが、オリジナルの要素を上手く抽出してほぼ同じ形態で再解釈するという手法自体はDroogやTHE BAWDIESとそっくりです。
あらゆる創造活動はコピーから始まるものだとは思いますが、コピー要素をギャグにせずにむしろ“古き良き時代の空気”を再現するものとして売ったり、ほとんどコピーだと分かっている人が“空気”に価値を見出して彼らの音楽を買ってしまうようになったのは、ここ最近のことだと思います。まさにオトナ帝国の世界。どうしてこういう状況になってきているんでしょうか。
分かりやすい答えとしては、“空気”をデータベースの一つとして消費しているということなんですが、それに関しては、東浩紀氏が『動物化するポストモダン』(2001)で書いているので、そっちを読んだ方が分かりやすいでしょう。これを説明するだけで自分の筆では数日掛かりそうです(汗)『動物化〜』では主にマンガ・アニメなどに絞られていましたが、音楽業界でも似た状況が起きつつあるようです。同人誌作家がそのまま登場人物の名前と設定を少しだけ変えて一般誌デビューし、それが売れてしまうような状況。著作権に厳しい音楽業界では今のところシミュラークル化が差異化になっていますが、これからはどうなることやら。今後も注目していこうと思います。


うあー、うまく説明できねー!
地道に練習しよう。



そういえば、書を捨てよ、と言えば寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』ですが、恥ずかしながらまだ観てないので、夏休みには観たいと思います。
予告編で既に十分面白そう。音楽もいい。

しかし評論のが先に出てた気がするな。。まー映画は映画と割り切って観ていきたいと思います。



そういえば結局ポメラは買いました!講演会のメモにも、授業ノートにも講義形式の場合はかなり使えます。これから論文も書かなければいけないので、重宝しそうです。
この調子でブログの更新頻度も上げていけるかな?
ではでは。