ナマとアマ

10/12に第五回吉祥寺アニメーション映画祭に行ってきました。
http://www.kichifes.jp/wonderland/event/filmfestival.html


いやあ楽しかった。全16個のノミネート作品を鑑賞したのですが、どの作品もアイディアに溢れていて面白かった。
個々の作品についての感想は友人兼後輩のid:my_youくんが書いてくれているのでそちらをご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/my_you/20091012/1255376148

グランプリの『恋するネズミ/ひだかしんさく』は、審査員の方々もおっしゃっていたように構成力が素晴らしかった。テンポ良し、ストーリー展開良しで、画面構成やカメラの動かし方も良かった(ネズミが倒れた振動でチーズが落ちてくるところとか足元の映し方とか)。



my_youくんと彼女はチーズかバターか論争が起きたんですが、もし彼女が最初からバターであったら、なぜチーズだけを盗んだネズミが彼女を偶然盗んでしまったのかの説明がつかなくなります。彼女だけがバターであった理由が分からない。それにこの作品では、チーズであった彼女がバターになってもネズミは彼女を愛し続ける、というところに彼女の代替不可能性が見えて愛というテーマに対する答え(=eternity)を提示しています。最初から彼女はバターだったけどそれが分かっても好きっていう話になると、「最初女だと思って惚れていたのに実は男だったけど愛し続ける」という話も可能になって、『ストップ!ひばりくん』や『天使な小生意気』的な展開も思い浮かぶんですが、どうでしょうか。。自分としては「恋人が実は〜だった」系だと相手が心変わりしても仕方ない、むしろそれは盲目ゆえの過ちなのでそれでも好きと言われてもプラス評価にはなりません。反対に「恋人が事故で〜になってしまったけど好き」系なら「やっぱりそれが愛だよなぁ」と頷かされてしまいます。恋愛はベタでいいんです。だって愛をeternalなものだと信じたい人間の心性は昔から変わらないのだから。


まあ個人の解釈なので作品からどんなメッセージを受け取るかは個人の自由ですけどね。しかし人と同じものを観てあれこれ言い合うのはやっぱり楽しいですねー。なかなかこういうことをできる友人がいなかったので、彼は自分にとって貴重な存在です。付き合ってくれてありがとう!


あと彼イチオシの『プッシーキャット/長尾武奈』には自分も笑わせてもらいました!THE ENDのタイミングが素晴らしい笑 リアルなホラーだったら笑って観てられなかったでしょうが、クレイだから自分みたいなホラー童貞でも安心。

武奈さんの過去作品も見てみたんですが、明らかにカメラワークや人形の造型が向上していて音楽なども含めた演出的な技術が良くなっている代わりに、画面の荒々しい臨場感が失われてしまったかなあと感じました。BLOODY NIGHTにあった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『REC』みたいな手振れカメラの臨場感がどんどんなくなっていっているのかな。審査員の方々が武奈さんの過去作品も観ていたのであれば、今回の作品は少々小奇麗にまとまって物足りなく感じたのかも知れませんね。素人感想ですが。ホラー作家がエログロナンセンスに行く過渡期的作品?かもしれません。


個人的には『くじびき/イ・ドンフン』が好きでした。
子供の主観世界を描く作品って大好きなんですよねー。もう失われてしまったものだから。そして忘れてはいけないものでもある。大事なものを思い出したり、発見したりすることが多い。この作品では年上のお兄ちゃんや無表情な大人の怖さ、駄菓子やの怪しい雰囲気、子供が本当に欲しい物などが淡々としたモノトーンの世界描かれていて、瑞々しい気持ちになりました。色んな感情が混ざって泣き出してしまう子供の姿。泣き方を忘れてしまったどこかの大人の話を思い出します。ゆっくりとしたテンポの底を流れる緊張感も絶妙で、この作品のように観客が様々な思いを巡らせる余地のある作品は強度が高い。観るたびに感想が変わってくるだろうし、観た人によって全然違うことを考えているでしょう。こういう作品を作るのは難しいと思うのですが、イ・ドンフンさんはなかなか上手く作っていらっしゃいました。韓国人の方なのかわかりませんが(ググっても俳優しか出ないし)、次回作も楽しみです。


今回のアニメーション映画祭で良かったのは、生産者の顔が見れたことですね。学生の方もいたし、脱サラしてバイトしながら自主制作アニメを作っているという方もいて、普通の人間の力でこれを作っているんだ!という事実に励まされました。アマとはいえナマの生産者を観ると、彼ら/彼女らの目がキラキラ輝いているのに変わりはありません(むしろプロより輝いているかも)。今の自分に一番足りないものが情熱だと思うので、情熱を持って何かを作っている人にできるだけ近づいて情熱を燃やすきっかけを掴みたいと最近考えています。行動あるのみ!青臭いこと大好き!あー話かけてみればよかった!


後悔をしたら次に活かすべし、ですね。
ではでは。